日系スタートアップが米国で挑戦する意義

こんにちは、米国サンフランシスコでAnyplaceというスタートアップをしている内藤です。

シリコンバレーに憧れ、大学を卒業後に、英語も話せない、金もない、知り合いもいない状態で渡米し、サンフランシスコで起業してから10年近くが経ちました。

紆余曲折ありましたが、先日Jason CalacanisのファンドをリードにSVBからのデットも合わせて約$10Mの資金調達を行い、TechCrunchに記事にして頂きました。

まだまだこれからですが、Anyplaceの事業を全米また全世界に拡大して、大きな事業を作っていきたいです。

今回は、ベイエリアやシリコンバレーが日本人にとって雲の上の存在ではなく、我々が本気でそれを目指すのであれば、日本人ファウンダーがもっと米国で活躍でき、米国での日本の存在感をもっと上げることができると信じれるようになったので、その意義とそのために必要なことに関して私の考えをブログにまとめました。

渡米してから10年近く経ち、手応えもある一方、まだこの程度かと悔しく思うことも多いです。ただ、10年間本気で挑戦してきて分かったことは、事例が少ないだけで、日本人の移民のスタートアップが米国で成功できないわけではないこと、また、個々の力では限界があるので、コミュニティとして日本の存在感を上げていく必要があることです。

これから米国で挑戦したいファウンダーや投資家の方々へ1人でも多く、このブログが届いてくれたら嬉しいです。長い文章ですが、最後までお付き合いください。

憧れのままのシリコンバレー

まずは、シリコンバレーやベイエリア、ひいては米国が多くの日系スタートアップにとってどのような存在なのかについてお話させてください。

シリコンバレーやベイエリアは、スタートアップの最高峰であり、それは中国、インド、東南アジア、アフリカのような新興市場が台頭した今でも変わらない事実だと思います。Apple、Google 、Facebook、Airbnb、Uber、OpenAIなど、多くの革新的な企業がこの地から生まれています。

つきなみな話ですが、私が大学生だった頃に、ソーシャルネットワークという、Facebookの創業に関する映画が放映され、自分と歳の変わらない若者が事業/プロダクトを作って世界中にインパクトを与えている、そういう人たちがたくさん生まれる、シリコンバレーという世界があるんだ、と衝撃を受けました。 (*最近では米国でマーク・ザッカーバーグやFacebookは悪の権化の如く嫌われていますが、昔はロックスターでした)

世代によってAppleのスティーブ・ジョブズ、X (旧Twitter) & Block (旧Square)のジャック・ドーシー、Airbnbのブライアン・チェスキー、OpenAIのサム・ルトマンなど、それぞれの憧れのファウンダーがいると思いますが、それらのほとんどの会社がベイエリアもしくは米国で生まれています。

私もどうせ事業をやるのであれば、憧れてるファウンダーのいる舞台でバットを振ってみたい、また、日本にいたら、ずっと米国に憧れ続けると思い、大学を卒業後、渡米しました。 (*詳しくは過去のブログを参照頂けたら嬉しいです)

そして、私が渡米してから10年近く経ちますが、ベイエリアや米国が我々日本のスタートアップにとって憧れの地であることは、変わっていないと思います。

私は全ての人が、米国で起業すべきだとは思いませんし、シリコンバレーの憧れを押し付けるつもりもありませんが、少なくともスタートアップ関連の仕事をしていれば、米国の最新のニュースを追っているのではないでしょうか。

いつしか、多くの人にとって、シリコンバレーやベイエリアは、ニュースを追う場所であって、日本人の移民のファウンダーが勝負する場所ではない、そもそも、日本人が勝負しても結果がでない、と考えるようになっています。

私はそれがとても悔しいです。

そして、今後10年で、今の状況は変えられると信じています。

実際に、日本人が米国で成功する想像(イメージ)ができないというのが現状ではないでしょうか。

スポーツを例に例えると、プロ野球の最高峰のメジャーリーグでも30年前は日本人が活躍している世界は想像できませんでした。しかし、今ではかつて憧れの舞台であったメジャーに、大谷翔平という、世界中の野球ファンが憧れる日本人のスター選手が生まれています。スタートアップでいうと、GAFA(Big Tech)の一角を、日本人が経営しているようなイメージです。大谷翔平選手以外でも、今では日本の選手がメジャーでプレーすることは、当たり前の光景になってきました。

サッカーも同様に、30年前は海外で日本人選手がプレーすることは、一般的ではありませんでしたが、今では日本代表の8割近くが海外組で、日本サッカー界の底上げに貢献しています。

最後に、私が小学生から高校にかけて、部活で行っていたバスケットボールでは特に、日本人選手がバスケの最高峰であるNBAで、活躍できるなんて想像できませんでした。しかし、今では八村塁選手がNBA名門チームのレイカーズで、現代のマイケル・ジョーダン的なスター選手であるレブロン・ジェームズと、プレーして活躍している事実に衝撃を受けました。繰り返しになりますが、10年前は日本人選手が、レイカーズのユニフォームを着て、レブロンとプレーするなんて想像もできないし、そんな発想がありませんでした。

その他も、渡邊雄太選手など、日本人では無理と言われていたNBAという舞台で、活躍する日本人選手が出てきた事実に、感動しています。

そして、それは必ずしもスポーツに限った世界ではなく、スタートアップにも同様の変化を起こせると信じています。

同じアジアでも中国、インド、韓国などは、米国でのコミュニティの層の厚さを感じます。米国の日本人のスタートアップのコミュニティが、第1世代だとしたら、彼らはもっと早い段階から米国で挑戦しており、3〜4世代くらい進んでいるイメージです。結果として、彼らのコミュニティから、ユニコーン(評価額1,000億円超え)の会社を作るようなファウンダーが何人も生まれていますし、米国のトップティアのVCのセコイアやa16zにも、必ずと言って良いほど、中国系やインド系のパートナーがいます。一方で、そのクラスのVCで、日系のパートナーは、ほとんどいません。

トップティアのVCに日系のパートナーが何人もいたり、日系のコミュニティから大きな事業を作るファウンダーが何人も生まれたら、もっと日本人が米国で挑戦しやすくなると思います。

同じアジアの国でもできたのだから、日本にもできないことはないと信じています。彼らが早い段階から、米国で挑戦していた背景のひとつとして、昔は自国のマーケットが小さかったため、視野を外に向けざるを得なかった背景があると思います。日本も、昨今の人口の減少の著しさを見ると、同じような状況に、今後数十年でなってもおかしくありません。

その状況は、悲観的に見ることもできますが、私は日本人が世界で挑戦せざるを得なくなることは、短期的には大変ですが、長期的には日本人が世界中で活躍する重要な転機になると、前向きに捉えています。

日本人が米国で挑戦する意義

次に、憧れという点以外で、日本人がわざわざ難易度の高い米国で、挑戦する意義は何なのか、について私の意見を書いていきます。

繰り返しになりますが、大前提として、私は全員が全員米国で起業すべきだとは思いません。ただ、大きな事業を作ることを目指すのであれば、海外で稼ぐ能力は無視できないところまできていると思います。これは日本で事業を行うスタートアップの経営者や投資家、双方に同様のことが言えます。

まず第一に、人口が減少し続ける日本のマーケットだけで事業を行うこと自体が、長期的に見るとリスクだからです。

一方で、米国は世界の先進国では唯一、人口が増加している国です。また、特筆すべきは、移民の人口の多さです。2021年時点で、3億人を超える米国人口に占める移民の割合は13%を超えており、その割合は年々増加しています。米国の移民の背景は様々ですが、世界有数の大学や産業のハブが、世界中から野心のある人々を惹きつけている点は大きいと思います。

私は米国がすべてだとは思いませんが、上記のような米国のダイナミズムは世界随一ですし、今後すぐに米国を代替する存在が出てくるとは思えません。

また、米国で事業をしていると、米国の消費の強さを感じる場面が多いです。個人と企業の双方において言えると思うのですが、日本にいると想像できないくらい、「良いものには高く払う」層が多く、「良いものを安く売る」デフレマインドの日本とは違い、正当な商品・サービスを高く評価し消費できる層が多いのは、事業を行う上で、すごく魅力的なマーケットだと思います。

このような人口も多く、消費が活発な本丸のマーケットで稼ぐ力が、今後日本の企業により一層求められると思います。

戦後の焼け野原から、トヨタ、ソニー、松下電器などの企業が、米国をはじめ、世界中に事業を拡大し、日本経済の発展を支えてきました。時代背景は違えど、国内の人口が減少傾向にある今こそ、世界を舞台に稼げる若い企業や人材が増えることが、日本経済に必要とされていると思います。

米国から事業を始める人が増えると、米国で商売を行う、経験や知識、ネットワークを持つ人材が増えるので、日本で既に事業を行っている会社の米国進出を助けることのできる人材が増えていくと思います。日本の企業は、海外で売れるポテンシャルのある商品やサービスを持っていても、海外での売り方が分からない、という企業が多い印象です。

短期的に見ると、米国で事業を始める人が増えると、日本の税収や雇用が生まれないという意見もありますが、長期的に見ると、海外で商品を売る経験やネットワークを持った人が増えることは、日本企業が海外でより稼げるようになるための、重要な資産になるのではないでしょうか。

また、米国で経験を積んだ人材が、自国に戻って事業を始め、大きな会社を作るケースもあります。モバイルバッテリーで有名なアンカー(Anker)が良い例で、米国のGoogleで働いていた、スティーブン・ヤンが、中国に戻り、アンカーを創業し、数兆円で評価される会社にしました。

内向きで人材を留めるような、短期的な視点にとらわれず、どんどん海外に出る人を増やし、海外で稼げる能力や視点を持った日本人を増やすことが、長期的には日本の重要な資産になると思います。

もうひとつ、スタートアップ投資という観点から考えると、縮小する日本のマーケットのみで事業をしている会社より、海外でも利益を上げることのできる会社の方が、市場としてのアップサイドがあるため、上場時に株価がつきやすい傾向にあり、そのようなスタートアップを増やすことが、日本のスタートアップ投資の市場規模の拡大 (リターンの最大化)に貢献できるひとつの方法であると考えています。

ベンチャーキャピタル(VC)のファンドサイズが小さければ、投資をした会社が2桁〜3桁億円代のエグジットをしてくれれば、十分リターンが出せます。しかし、幸いにも日本のスタートアップのエコシステムの成長に伴い、VCのファンドサイズは増加傾向にあります。グローバル・ブレイン、WiL、GCP、ジャフコなど、3桁後半から4桁億円(1,000億円)を超えるファンドサイズのVCが日本でも増えてきました。

これ自体は、日本でスタートアップ投資のプレゼンスが上がっており、日本のVCが世界水準に近付いている、という点で喜ばしいことですが、一方で、ファンドサイズが大きくなることで、VCに資金を提供しているLPに十分なリターンを出すハードルも上がることを意味します。

彼らがファンドのLPに十分なリターンを出すためには、従来の日本のエグジット(売却・上場)時についていた、平均的な株価では足りず、より高い株価でエグジットできるスタートアップが求められます。高い株価で評価される方法は様々ですが、その一つとして、より海外で稼いで、株価がつくようなスタートアップを生み出すことが重要だと思います。

米国を見ると、セコイア・キャピタルやa16zのような米国のトップティアのVCのファンドサイズは 4桁億円は当たり前で、AUM(運用資産残高)で数兆円を超えるような世界なので、当然スタートアップに投資をする投資家のリターンへの期待値が高いです。

彼らのファンドのレベルになると、ユニコーン(評価額1,000億円代)のエグジットでは小さ過ぎるため、投資先の会社をすぐには上場させず、長期間プライベートで資金を集め、リスクを取って事業に資金を投下し、世界を取ってこい!というスタンスでスタートアップを支援します。

実際に、AirbnbやUberなど10年以上未上場で、プライベートマーケットから資金を集め、事業を数兆円の時価総額になるまで、育ててから上場する企業が米国では増えました。

このように、日本のVCの規模が世界水準に近付くにつれて、はやく上場しよう!から、大きく資金を集めて、世界を取ってこい!の姿勢の投資家がより増えるのではないでしょうか。

そして、日本のスタートアップには、大きく資金を集めて、世界を目指すファウンダーがより一層必要とされます。

日本人が米国で存在感を上げるために必要なもの

私が、米国で日本のプレゼンスを上げるために必要なことは、以下の3つの数を増やして、好循環を生み出し、コミュニティを強くしていくことだと思います。

1.ロールモデル (成功事例)
2.挑戦する人(≒失敗する人)の数
3.投資家 (リスクマネーの供給者)

米国で挑戦する人が少ない一番の理由は、成功をイメージできないことです。挑戦する人が少ないと、成功する人も出てきませんし、彼らにリスクマネーを提供する投資家も増えません。これは、鶏と卵の関係ですが、ロールモデル(成功事例)が生まれることで、その歯車が動き出すと考えています。

アジアの移民1世の成功事例でいうと、Zoomの創業者兼CEOのEric Yuan (エリック・ヤン)がいます。エリックは中国から、ある程度年を取ってから米国に移民したファウンダーで、英語もアジア訛ですし、就労ビザの取得も苦労してきた過去があります。それでも、ベイエリアから世界中に使われるビデオ通話のプロダクトを作り、数兆円を超える時価総額の会社を生み出しました。

私にとって、彼はアジア系移民のファウンダーのヒーローですし、同じアジア出身の彼ができたのだから、日本人だから無理という言い訳もできないと思います。

そして、日本人で米国から大きな事業を作るヒーローが生まれたら、もっと日本から挑戦する人が増え、米国で挑戦する人に投資をする投資家も増えると考えています。

また、そのような米国で実績やネットワークができた経営者が、次に挑戦するファウンダーや投資家に、米国のネットワークの中の人たちを紹介できたり、彼らに現地での成功や失敗の経験を共有することができるようになります。

よくシリコンバレーのインナー・サークルに入るのは難しいと言われていますが、『この人の紹介だったら会う』とインナー・サークルの人たちに、思って貰えるような実績や信頼のある経営者を増やしていくことが重要です。

次に、そのロールモデル(成功事例)を生み出すには、圧倒的に米国で挑戦するファウンダーの数を増やす必要があります。スポーツもそうですが、競技人口とレベルはある程度比例すると思います。これはスタートアップでも例外ではありません。

スタートアップ自体が難しい上に、言語やネットワークでディスアドバンテージのある日系の移民のファウンダーが挑戦することの難易度が高いのは事実です。その中で、成功事例を出すには、もっともっと多くの米国で挑戦する日系ファウンダーが必要です。

加えて、失敗した人が再度挑戦し続けることが重要です。仮に1社目を失敗しても、誠実で真剣にチャレンジをしていれば、2社目以降の起業にも資金は集まりますし、経験は残るので、彼らが学び続けている限り、成功の確率は上がり続けます。

特に、米国のスタートアップのエコシステムは、挑戦し続ける人には最高の場所だと思います。良い例ではないかもしれませんが、Uberのトラビスや、WeWorkのアダムなど、スキャンダル的に会社を追い出された彼らでも、既に次の会社を始めており、既に三桁億円の資金調達をして、挑戦しています。仮に彼らが日本で同じような状況になった場合、彼らが同じスピード感と規模で再挑戦するのは難しいように思います。

また、私は挑戦した全てのファウンダーの失敗に意味があると思います。その失敗から学び、それをコミュニティで共有し、同じ失敗を減らしていくという学習の循環を生み出せるからです。

そして、この循環が加速する過程で、挑戦している人の中から、ファウンダーから投資家に転身して、米国で自分でファンドを立ち上げたり、米国のVCにジョインしてパートナーになるなど、米国の様々な分野で役割を担う人が増えることで、日本人のコミュニティが強化されていくと考えています。

私は日本人のコミュニティとは、日本人だけで群れることではなく、本気で米国で挑戦して、道を切り開く人たちのコミュニティであるべきだと思っています。彼らが、お互いをサポートすることで、成功確率を上げることができます。

次は投資家です。挑戦する人の数を増やすには、彼らを支える投資家(リスクマネーの供給者)の数も重要です。こちらも鶏と卵の関係ですが、米国で挑戦するスタートアップに、投資ができる投資家の数がもっと増えることで、上記のサイクルを加速させられると考えています。

もちろん、VCは外部のLPから資金を募って、スタートアップに投資をして、リターンを出すことが仕事ですから、彼らからより投資を引き出すには、米国で挑戦するスタートアップ側のレベルを上げることが必須です。

米国では、上場時にUberやAirbnbに数兆円の時価総額がつくように、米国で事業を大きく成功させたら、リターンのアップサイドがあるのは確かなので、投資家にとって金融商品としての魅力は十分にあります。

ただ、現在の日本のスタートアップ界では、米国市場に関して、知見や経験のある投資家は多くないので、より知見のある現地のVCや投資家が入っているかを、投資基準の優先事項にする投資家が多いです。

これ自体は仕方ないことですし、米国で挑戦する以上、ファウンダー自身が超えなければいけない壁のひとつだと思います。しかし、これも鶏と卵の関係で、日本からロールモデル(成功事例)を出すために、彼らに対して、リード投資をできたり、米国のリード投資家を一緒に探す、米国のキーパーソンを紹介できる、といったようなサポートができる日本の投資家が少しでも増えることが、米国で挑戦する日本人の成功率を上げることを、大きく前進させると思います。

ファウンダーの立場から言うと、ネットワークがまったくない状態から、現地の投資家を切り開くのは、めちゃくちゃ大変ですし、時間もかかります。このネットワークの強さの差が、中国、インド、韓国など他のアジアの国と日本の、米国でのコミュニティの強さの差だと感じます。

日本人ファウンダーや投資家は増えてきた

ベイエリアの日本人ファウンダー・投資家の集まり

私が10年前に、大学を卒業して渡米した時は、ベイエリアの日本人ファウンダーといえば、トレジャーデータの芳川さんや太田さん、Fondの太郎さんやサニーさんなど、数える程度のスタートアップが、孤軍奮闘している印象でした。

KDDIに事業を売却後、私とほぼ同じタイミングで、ベイエリアに引っ越してきた、連続起業家のKiyoさんが来てからは、お互いが助け合いながら、米国で勝ちにいくことを目指す、コミュニティとしての色が強くなったと感じます。

Kiyoさんは、自分自身も現役で米国でスタートアップに挑戦している中、私を含む同世代や、後輩の世代のファウンダーを、家族のように気にかけ、応援してくれます。

先日は、セコイア・キャピタルの伝説的な投資家、マイケル・モリッツの立ち上げたメディアのSF Standardに、日本人ファウンダーのコミュニティのゴッドファーザーとして取り上げられていました。

Kiyoさんのおかげもあり、この1o年間で、徐々に米国で挑戦する日本人ファウンダーが増えてきました。その仲間の誰かが、大きな事業を作ったら、流れは大きく変わると思います。

また、米国挑戦組を、積極的に応援する投資家も、徐々に増えてきました。

全員紹介したいのですが、数が多いので一部だけご紹介させて頂くと、エンジェル投資家であれば、メルカリの共同創業者の進太郎さん、トミーさん、Ryoさん。ペライチの橋田さん、データインデックスの提橋さんなど。

アーリーステージのVCだと、East Venturesの金子さんやF Venturesの両角さん。また、米国のスタートアップを含め、幅広いステージに出資されている、林さん・Joiさん率いるデジタルガレージ。MSIVCの中村さん・島崎さん、などが積極的に、米国で挑戦するファウンダーに出資をしています。

そして、より具体的に海外を押し出したり、実際に行動に移されている例としては、本田圭佑さんが立ち上げた、海外へ挑戦する日本のスタートアップへの投資をテーマにしたX&KSK Fundがあります。

加えて、DeNAの創業者でもあるDelight Venturesの南場さんは、南場さん自らが定期的にベイエリアに訪れて、現地のミドル・レイタースタージの投資家と関係を築き、「南場さんがそこまで言うなら投資をする」という事例を、Delightのポートフォリオの会社向けに作ろうと、実際に汗を流して、行動している貴重な存在です。また、Delightの渡辺大さんも、ベイエリアをベースに、現地のネットワークを広げています。

GFR Fundの筒井さんは、現地でファンドを立ち上げ、投資先の有無に関わらず、積極的に日本人ファウンダーを、現地のネットワークに繋いで頂いています。

最近では、日本のレイターステージのファンドも、より積極的に海外へ出るスタートアップを支援している印象です。

グローバル・ブレイン(GB)の百合本さんは、常に大局的な見方をされていて、米国の高金利により現地のスタートアップが資金調達環境の悪化で元気がない今こそ、日本のスタートアップが米国市場でシェアを拡大する絶好のチャンスだと、日本のスタートアップ経営者を鼓舞してくださっています。また、GB自身も、米国のみならず、世界中にオフィスや人材を拡大し、積極的に海外へ投資を広げている稀有な存在です。

グロービス・キャピタル・パートナーズの高宮さんも、日本のゼロ金利という良好な資金調達環境が、日本のスタートアップが世界で戦う上で、大きなアドバンテージであることを、お話されていました。また、堀さん率いるグロービスとしても、オフィスをSFに新設したり、G1 Silicon Valleyを毎年ベイエリアで開催するなど、堀さん自身が現地に積極的に足を運んでネットワークを築いています。

AsanaやDeepLなど、米国の著名なスタートアップに投資をしており、長年米国の第一線で、投資家として活動されている、WiLの伊佐山さんも、ご自身が現地で築かれた、ネットワークや経験を活かして、日本に貢献したいという強い思いを持たれており、始動などの政府との取り組みを通じて、多くの日本人をシリコンバレーに繋いでいる貴重な存在です。

ジャフコの三好さんも、インタビューで、スタートアップ界で大谷翔平選手のような存在になる、起業家を生みたいと話されていました。また、ジャフコは、978億円規模のV7ファンドのリリースに、「国内のみならず海外進出を目指す企業への投資と関与にも挑戦していきたい」と、海外を目指すスタートアップの支援に前向きです。

上記のようなVCのサポートもあり、最近では、ジョーシス、CADDi、Zealsなど、日本発で積極的に米国に展開する会社が増えてきました。

日本のレイターステージのVCがより外向きになることは、米国で日本の存在感を高める上で、とても良い傾向だと思います。

それぞれの役割

10年以上お世話になってきた日本のスタートアップの世界で、自分がどういう役割を果たせるかを考えた時に、もっと米国で日本人が挑戦しやすい世界になってほしい、そして少しでもそれに貢献したい、と思うようになりました。

米国でのファウンダーや投資家の挑戦、その成功や失敗のひとつひとつに意味があり、それが歴史を作っていきます。

個々の力は些細なものですが、コミュニティとして強くなっていくことで、スタートアップの歴史を振り返った時に、この時期に米国で日本の存在感がぐっと高まった、と言われるような、そういう変化を起こせると信じています。

その結果、華僑ならぬ和僑と呼ばれるような、強いコミュニティが米国で作れたら日本の資産になると考えています。

いつか自分に少しでもお金ができたら、日本の若者100人に投資をして、米国に連れてきたいです。100人挑戦したら、何人かは大きな事業を作れると思いますし、失敗した人がまた挑戦し続けることで、コミュニティの層が厚くなると思います。

とはいえ、お金がないことが、アクションを起こさない理由にはならないと思うので、できることからやっていきたいです。

自分の事業が最優先なので、使える時間は多くないですが、ベイエリアで挑戦している仲間には、できる範囲でサポートしていきたいです。ベイエリアで挑戦していれば、いつか会う機会があると思うので、その時はよろしくお願いします。

また、これからベイエリアで起業したい人は、こちらのNotionを参考にするのをおすすめします。

繰り返しになりますが、私は米国やシリコンバレーが全てだとは思いませんし、それを押し付けるつもりもありません。

でも、どうせなら世界最高峰の舞台で、バットを振り続けたい。少なくとも、自分はそういう人生にしたいです。

そして、同じようにバットを振れる仲間が増えたら楽しいし、その結果、日本人が当たり前のように米国で活躍できるような、そんな世界になったら嬉しいです。

私が10年前に渡米した頃は、なんで米国で起業するの?と半ば止められるように聞かれましたが、10年後は、なんで米国で起業しないの?と当たり前に聞かれるくらい、選択肢のひとつとして、米国で挑戦するハードルが下がっていれば良いなと思います。

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Co-founder & CEO of Anyplace (www.anyplace.com) シリコンバレー/サンフランシスコでAnyplaceという事業を作っています。